地域仕事づくりコーディネーターサミット2013

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東海ブロック代表

伝統産業変革の原動力となる若者

「瓦」日本一の街から伝統産業を変革する

2013年創業100周年を迎えた老舗瓦メーカーの三州野安は、古くから新しい取り組みを続けてきました。伝統産業を変革しようとする経営者と、その推進役になった若者との挑戦は今も続いています。

プロジェクト実施の背景(問題意識・課題など)

生産量4分の1、メーカー数96%減少という、とても厳しい状況にある「瓦」業界。新規住宅着工数の減少や瓦以外の屋根材の普及などで厳しさは増すばかりだ。日本一の瓦産地=愛知県三河地方にある三州野安は、創業から100年、常に新しい取り組みを続けてきた老舗瓦メーカー。創業者から4代目にあたる野口さんは、社内システムの再編や業務改善、さらには海外販路開拓などなど、将来のために重要なプロジェクトをたくさん抱えながら、「社員さんのために、もっと働きやすい環境を作りたい」と奮闘していた。

若者が担当した仕事内容・関わり方

野口さんの「社員のために」という想いに共感し、力になりたいとチャレンジを決意したのが中京大学1年生の清水さん。「野口さんと共に新しい企画をドンドンやっていこう!」と意気込んでいた。しかし、最初に担当したのは、千種類以上ある瓦の在庫管理を効率化し、ご出荷を減らすという改善の仕事だった。厳しい瓦業界の中での生き残りをかけた重要な取り組みだったが、仕事としては本当に地道なものだった。例えば、これまで品番だけだった商品データベースに写真を登録するために千枚以上の写真を撮影したり、在庫置き場の番号をペンキで表示し直すなど、コツコツと積み重ねる仕事の連続だった。

事業成果

コツコツ積み重ねる仕事ばかりで、役に立てている実感を感じられなかった清水さんが、大きく変化したのは開始から3ヶ月が経った時。その頃には、地道な仕事に一生懸命打ち込む姿が、他の社員さんからの好感につながり、頻繁に社員さんと話すようになっていた。「働くの意味は、傍を楽にすることだよ」社員さんからの言葉が、清水さんの中で自身の経験に意味を与えた。「少しでも、三州野安で働く人が楽になるために大切な仕事だ」と仕事の意味を体感した清水さんは、写真撮影などの小さなひとつひとつの仕事にも工夫を凝らすようになった。積み重ねと工夫の結果、誤出荷は半年で68件から49件へと28%も減少し、業務改善の目標を達成することが出来た。

関わった若者

中京大学/清水 彩(しみず あやか)

活動先

三州野安 株式会社/野口 安則
全国の瓦生産6割を占める三州瓦の中でも有数の瓦メーカー(2013年で創業100年)。洋風建築にも合う瓦をいち早く開発したり、瓦メーカー初のリサイクル認定を受けるなど、新しい取り組みを続けている。

活動先の人々(経営者や社員、地域住民など)の具体的なコミットメントや工夫したこと

・野口さんだけでなく、接する社員さんからも、日々、単純に見える業務の意味を伝えるようにしてもらっていたこと(何度でも、繰り返し)。
・仕事の意味と目的を伝えたらあとは、大胆に任せることで、他の社員さんと自ら接点を作らざる得ない状況をつくったこと。
・社宅を用意して、他企業インターン生との「社宅会」を奨励し、切磋琢磨とフォローし合える関係づくりを意図的につくった(同時に大学との両立の助けとなった)。

若者の活動によってもたらされた変化や気づき

野口さんだけでなく、社員さんや協力企業の方など、関係するたくさんの人のために仕事をすることの喜びから、清水さんは三州野安に就職したいと考えている。「もっと役に立てるようになりたい」と、現在も三州野安のプロジェクトに挑戦中。インターン期間中にスタートしたプロジェクトは、野口さんが昔から可能性を感じながら、着手できなかった大きなテーマに対する挑戦だ。「瓦から家づくりを考えてみる」というテーマで、白い瓦を使ったシンプルなエコ住宅を発信し、「瓦ではなく家づくりを提案する瓦メーカー」を目指すプロジェクト。「黒い瓦の町並みを白い瓦に変えちゃおう!」ということでオセロプロジェクトと名付けられたプロジェクトは、清水さんの推進力で新会社設立にまで話が進んでいる。

スタッフ/インターンのメッセージ

コーディネーター 浅井 峰光

伝統産業の革新を進める野口さんの想いに共感し、コツコツと業務改善に取り組む中で「傍を楽にする」の意味を体感。その後も、新会社設立に繋がるプロジェクトを推進するなど、革新の原動力となる若者の事例です。