地域仕事づくりコーディネーターサミット2013

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九州ブロック代表

2人3脚で挑む新たな農業のかたち

小規模農業の光 そら豆の6次産業化

薩摩半島の南端、温泉地として有名な鹿児島県指宿市はそら豆生産量日本一を誇る農業の町でもある。 そら豆の専門店「まめそら」で店長とインターン生、2人が歩んだ8ヶ月間から見る農業の6次産業化推進秘話。

プロジェクト実施の背景(問題意識・課題など)

こだわりのある高品質な野菜を適切な価格・形でお客様のもとへお届けする。農業界を変える新しい試みが鹿児島でも生まれている。農業は通常、JAや卸売業者が1次生産者から農作物を買い取り全国の消費者へ届けるため、メリットの反面、こだわりを持って丁寧に育てられた作物と機械化によって大量生産された作物、全てが同等に評価されて競争力を持たず、業界内にチャレンジが生まれ難い。そんな現状を打破すべく、そら豆農家の水迫さんがたった一人で始めた「まめそら」。WEBでの広報や加工商品の開発など、やりたいことは山ほどあるが、畑仕事に追われてなかなか着手できないという課題を抱えていた。

若者が担当した仕事内容・関わり方

「まめそら」での長期実践型インターンシップに挑戦した鹿児島大学2年生の吉野さくらさん。宮崎県の農家出身の彼女は「こんなに面白いことを考えて農業をしている大人もいるんだ!」と感銘を受け、ここでのインターンを決意した。彼女を待っていたのは、WEBの新規コンテンツ企画から新商品開発に関する調査・広報・実販売に至るまで、「まめそら」の新たな試みに関する業務全て。自らアイディアや気づきを提案し、実際にやってみて改善していくということをひたすら繰り返すなかで、これまで店長1人ではできなかった取り組みを次々と企画し実行に移していった。特にそら豆の加工品"冷凍そら豆"の開発へ向けた業者の選定や打ち合わせ、試作品作成は今後の「まめそら」を成長させる大きな一歩となった。

事業成果

他にもそら豆レシピコンテストやこれまで繋がりのなかった他団体との連携企画、そら豆の歴史や豆知識といったそら豆自体の情報発信など、店長と吉野さんはこれまでの事業の枠に囚われず、2人3脚で様々な挑戦を行った。
吉野さんは高い当事者意識を持って経営者の目線になって奮闘し、店長は吉野さんと「上司部下」ではなく「対等の立場=仲間」として接した。結果、店長が温めてきた多くの施策と吉野さんが考え出した新しい提案の相乗効果によって、WEBショップのPV数がインターン受入前の月平均値3,154PVから12,927PVにまで伸び、直帰率は10%減少、売上・利益ともに2倍以上に増加した。

関わった若者

鹿児島大学/吉野さくら(よしの さくら)

活動先

そら豆の専門店「まめそら」/水迫良太
そら豆専門のWEBショップの運営、そら豆などの生産、卸し、販売事業を行なっている。通販事業では、鮮度はもちろん、いち早く味わっていただくためにも取れたてのそら豆の産地直送にこだわりを持っている。

活動先の人々(経営者や社員、地域住民など)の具体的なコミットメントや工夫したこと

上司と部下という意識ではなく、パートナーとして吉野さんを信頼し、いろいろなことを任せていた。彼女の提案ほぼ全てに対してGOサインを出し、単なる作業で終わらないよう問いかけを行った。特に初期は成功体験をつませることを意識し、「がんばれば達成できる」目標を設定することで彼女に”勝ち癖”をつけることを意識した。そうすることで彼女が「自分が今出来る事はなんだろう?」と考え、意見が出やすい環境作りを行った。

若者の活動によってもたらされた変化や気づき

店長は「今のまめそらは吉野さんが創った様々なご縁に支えられている。」と語り、彼女が育てた挑戦の種を更に育んでいく決意を固めた。吉野さん自身も当事者意識を持つ大切さを学び、何事も自分次第であると実感した。
今回の「まめそら」の実績は、一反あたり通常の2倍以上の利益をあげるビジネスモデルを確立し、何よりたった2人でも6次産業化推進は可能であるということの証明となった。最近は周辺農家が「まめそら」のモデルや発信方法に関心を寄せ、「まめそら」はリーディングカンパニーとして「新しい挑戦を始める農家」が増える起点になりつつある。

▲インターン中期。SNSやWEBでの広報用写真の撮影中。実際に畑に出て栽培中のそら豆の様子を観察し、まめそらのそら豆の魅力を伝えるWEBコンテンツに反映させていく過程。

▲インターン後期。彼女の提案の一つに「そら豆の実販売」があり、鹿児島市内の繁華街でブースを出して販売している様子。ここで「そら豆自体を知らない人が多い」事に気づき、その後まめそらの広報業務からそら豆自体の魅力発信に方向をシフトするきっかけになる。

スタッフ/インターンのメッセージ

コーディネーター 末吉剛士

水迫さんは「将来これやりたい」を頻繁に吉野さんと語っており、その関係性と信頼感が吉野さんの当事者意識とモチベーションを高めました。コーディネート側は業務や施策の本質を問う役に徹し、行動促進を意識しました。